豊かな自然に恵まれた
しまなみ海道の発着点、尾道
尾道と聞いて何を思い浮かべるだろうか。坂道のまち。ねこのまち。島と海に囲まれた箱庭的都市。中でもサイクリングが楽しめるまちとしての一面も忘れてはならない。
尾道市と今治市を結ぶ「しまなみ海道」は、瀬戸内海に浮かぶ風光明媚な島々をつなぐ海の道だ。しまなみ海道のサイクリングロードは「海峡を横断できる自動車道」として日本で初めて整備され、その美しい絶景は世界中のサイクリストから注目を集めている。
そんなしまなみ海道の発着点・尾道の観光を支え続けているのが尾道観光協会だ。
地元の人と関わった
大学時代の活動が転機に
「尾道に来たかったかと聞かれると、実はそういうわけではなかった」。意外にもそう語るのは、尾道観光協会の石原さん。現在の尾道市立大学の前身にあたる尾道大学で、進学を機に地元・岡山から単身で尾道にやってきた。しかし、当初は尾道への特別な想いがあったわけではなかった。
石原さんの転機となったのは大学時代。茶道部やインターンシップの活動を通して、人と関わることが 自身の性格を変えるきっかけとなった。尾道で出会ってきた人たちとのつながり。地域との関わりが巡り巡って、今があるという。
地元の課題や観光客のニーズに寄り添った
ツアーのプランニング
「事務所でツアーの企画や調整をしている時期もあるが、大体外を飛び回っている」と石原さん。尾道観光協会は旅行会社の登録をしており、ツアーをしたり、旅行会社に当地のツアーを提案したりしている。連日ガイドを務める時期もあれば、プランを策定するためにコースを実走したり、調整に出かけたりも。最近では柑橘農家の収穫手伝い「シトラスサポーター」をスタート。これは石原さんが農家から聞いた課題をすくい上げて企画した取り組みのひとつだ。
ツアーを組むときに大切にしているのは、お客さん一人ひとりが安心して楽しめるコースを考えること。たとえばサイクリングツアーであれば、目的も体力も人によって異なるので、ニーズに寄り添った内容を考える。のんびり走って景色を楽しんでほしいし、各地の旬なお土産なども買って帰ってほしい。季節が変わったらまた来たい、もっと島巡りをしたいなど次につながるような、そんなガイドを心掛けている。
尾道と地元をつなぐ。
そんな関わり方を目指して
「私は尾道の生まれではないし、自分を移住者とも思っていなかった。縁があってここに住み始め、縁があってここにいる」。石原さんは自分のことをそう表現する。話を聞くと、確かに熱い想いの移住者とは一線を画すクールな印象を受ける。しかしだからこそ冷静に尾道を俯瞰し、地元の人と観光客の接点のような存在となれるのだろう。
今後の展望を聞くと、「尾道と地元の良さを活かせる仕事に関わってみたい」と石原さん。実家のある岡山でも尾道で培ってきたつながりや観光知識を今後に活かしていきたい。互いの地域にあるもの・ないものをつなぎ合わせることで、新しい価値が生まれるのではないか。
地域を内から支える人、外から関わる人、架け橋となる人。尾道への関わり方は決してひとつではない。