25年、地域に寄り添う ラジオステーション
「おはようございます。1月11日木曜日、時刻は午前10時6分をまわりました。今日も一緒に楽しい朝を過ごしていきましょうね」。
FM79.4MHz、尾道のコミュニティ放送局FMおのみち。毎朝、ラジオからは明るく晴れやかな声が聞こえてくる。月曜から金曜、午前中の番組を担当しているのは、「てんこさん」の愛称でリスナーから親しまれている河上さんだ。
FMおのみちが開局したのは、さかのぼること1999年6月。1999年といえば、しまなみ海道が開通したのもこの年になる。現在ラジオは尾道駅前から発信されているが、開局当時は商店街の中にスタジオがあったそうだ。
縁がつながり
ラジオの道へ
河上さんは、岡山県の山あいで生まれ育った。ミュージカルが好きな子どもで、クラブやサークル活動、劇団での活動を通して長く芝居の世界に身を置いてきた。短大時代、演劇活動でつながった縁でラジオの道へ。週1回の「お天気リポーター」を任され、毎週月曜の朝5分間、元気な声をお茶の間に届けていた。
その後、他局での経験も経て尾道への転居を考えていたある日、FMおのみちが開局することを知る。番組アシスタントとして、コミュニティ放送局のスタートと同時に入局。そして今日まで、番組スタッフとして、パーソナリティとして、ローカルニュースを発信している。
住民が必要とする情報を
届ける責務
届いたメールをリアルタイムで読み上げるのも、生放送のコミュニティラジオならではだ。「荷解きをしながら聴いています」という移住者からのメールも届く。「ラジオをつけたらいつでもそこにいる。そんな安心感を届けたい」と河上さんは語る。
また、コミュニティ放送局は時に防災ラジオの役割も担う。たとえば2018年に発生した西日本豪雨では、尾道も土砂災害や断水の被害に見舞われた。河上さんたちラジオパーソナリティは、市からの最新情報をくりかえし読み上げた。銭湯の情報、断水解除の情報、コインランドリーの情報など、とことん市民に寄り添った情報を届け続けた。「FMおのみちがあって助かった」。そんな感謝の声も多く寄せられたそうだ。
目指すのは
まちと市民の応援団
河上さん自身も、尾道へ移住してきた一人だ。女手ひとつでの子育てと仕事を両立させるべく、子どもを寝かしつけながら生放送に臨んだこともあったという。そんなときに支えてくれたのは尾道の人のあたたかさだった。
開局から25年、ラジオを通して町の変化や市民の活動を見つめ続けてきた河上さん。「『届けたい』という思いで日々マイクに向かっている。毎日の生活に元気や彩りを添えられるような、みなさんの応援団でありたい」。
ローカル情報を提供し、メールやお便りを通じてコミュニケーションを生み、まちと人とをつなぐコミュニティラジオ。朝10時にラジオをつければ、今日もいつもの声が聞こえてくる。