学び舎だった場所に生まれた
子育て世帯の新しい居場所
子育て
少子高齢化や人口減少によって毎年多くの小中学校が閉校となり、廃校施設の有効活用が全国的に求められている。
尾道市原田町にあった市立原田中学校も、2014年に惜しまれながら閉校。しかしその翌年、校舎は「原田芸術文化交流館やまそら」として生まれ変わり、地元の人をはじめ近隣市町からの人が訪れる地域の交流拠点として親しまれている。
そんな「やまそら」内に2025年、「子育て&カフェスペース みぃちる」がオープンした。老朽化が進んでいたキッズルームをリニューアルしたもので、子育て中の親がほっと一息つけるようなカフェスペースの機能も備わっている。

子どもの場所が
0か1かは大きい
0か
「みぃちる」の発起人である岡本さんは2023年秋、夫の実家がある原田町に移住。大きなお腹で参加したキャンプイベントがきっかけで、事務局スタッフとして「やまそら」の施設運営にも携わることになった。
従来あったキッズルームは管理する人がおらず、まっさらにしてレンタルルームにする意見もあったという。しかし子どもが遊べる部屋がゼロになってしまう損失は、地域にとって大きい。その危機感から岡本さんは自ら企画書を作成し、この場所を再生するプロジェクトを立ち上げた。
壊れたエアコンの修理、照明・電気工事、テーブルや椅子などのリニューアル費用は、クラウドファンディングで調達した。家族や周囲の協力もあり、ほどなくして新しい場が完成。「大変で、心が折れそうになった瞬間もありました」と、岡本さんは笑って振り返る。

原田で取り戻した「自分らしさ」
田植えの春、青々とした稲がそよぐ夏、黄金色に染まる秋、刈り取られた冬。原田では、田んぼの様子で季節が一目瞭然だ。娘と手をつないでそんな景色のなかを散歩するのが、岡本さんにとってかけがえのない時間となっている。
ここまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。転々とキャリアを重ね、「社会に貢献できているのか」と自問する日々。完璧主義で、自分を追い込みがちの性格がたたり、心身の調子を著しく崩したこともある。
豊かな自然のなかで娘の成長と向き合い、家族たちと過ごす日々で気付いたのは「なんでもこなせる自分じゃなくてもいい」「周りを頼る」ということ。原田での活動や、ここで達成した一つひとつの経験が、岡本さんの今を支えている。

新たに灯った火が
未来へとつながっていく
未来へと
「みぃちる」という名前には、子育て中の親であるme(私)がchill out(チルアウト)することで「満ち足りる場所になってほしい」という想いが込められている。
キッズスペースでありつつ、親たちがコーヒーやお弁当を持ち寄ってくつろげる。ここは、子どものための場所であると同時に、親が「私」に還る場所。「この場所だったらできそう、おもしろそうだからやってみようと、母親たちのささやかな願いが気負わず実現できる場所でありたい」と、穏やかに岡本さんは語る。
オープンしてから、原田町内外から親子が訪れるようになった。これから先も親子の交流が育まれていくだろう。彼女が教室に灯した小さな火は、今日も校舎の窓から、尾道を優しく照らしている。









