色彩豊かな
チョークアートの魅力
輪郭が描きこまれると、無地のボードの上に乗せられた色と色とが出会って重なり合い、グラデーションが生まれる。影となる色もあれば光となる色もあり、平面に描かれたモチーフは徐々に立体感を増していく。チョークアーティストとして活躍する大原さんの作品からは、生への喜びや、命の躍動を感じ取ることができる。
チョークアートに使われているオイルパステルという画材は、ふれてみるとしっとりとしていて質感がやわらかく、発色が良いのが特徴だ。このオイルパステルで乗せた色を手で伸ばしながら、絵の細部や色のニュアンスを表現していく。
チョークアートとの出会い、
アーティストとしての始まり
大原さんは、尾道市向島出身。高校や大学も地元から通ったという生粋の尾道育ちで、海があり、島があり、坂道がある尾道の風景は彼女にとって当たり前の日常だった。振り返ると、油彩画をたしなむ祖父の影響で、お絵かきが好きな幼少期だったという。
チョークアートと出会ったのは大学時代。語学留学で訪れたオーストラリアのカフェで、何気なく飾られていた絵に心を奪われた。
「あのとき見た絵が忘れられない」――。チョークアートの本場で本格的に学ぶため、2011年オーストラリアに再留学。帰国後はチョークアーティストとして「atelier YUKA」を始動し、地元尾道市を中心に個展、グループ展など活躍の場を広げていった。
「場所は関係ない」
故郷・向島で教室をスタート
知り合いの店で絵を見てもらったり、チラシを置かせてもらったり。アーティスト活動は試行錯誤の連続だったが、応援してくれる人を通して「尾道は人があたたかい」と気が付いた。
転機となったのは2016年。伝統ある美術展覧会「二科展」で広島二科新人賞を受賞し、一躍脚光を浴びた。同じタイミングで「チョークアートを習いたい」と地元の人からメッセージが届く。東京に出ようか悩む最中だったが、それを機に拠点を尾道に置くと決めた。
現在は、向島のアトリエで教室を営む傍ら市内外小・高等学校の非常勤講師を務め、アーティストとして「創る」ことと、指導者として「教える」ことの2つを軸に、チョークアートの研鑽を続けている。
気付かせてもらえた
ふるさとの魅力
“気軽な島暮らしが叶う”と移住者に人気の向島エリアだが、大原さんにとってこの島は生まれ育った故郷に過ぎない。しかし「『尾道の風景って海外に誇れるくらい美しいんだ』と、逆に私たちが教えてもらっている。再認識したふるさとの魅力を、作品として積極的に発信したい」と、大原さんは今後の展望を話す。
また活動の幅を広げたことで、教育現場における目標もできた。「子どもたちにはアートにふれる機会をたくさん作ってあげたいし、自分のやりたいことや個性を見つけてほしい。チョークアートが、それらを考えることへのヒントになれば」。
港町である尾道では、昔から多くの船と人が行き来していた。住民と移住者、それぞれの視点があるからこそ、町はいつまでも色褪せないのかもしれない。尾道は、どんな色にもなれる可能性を秘めている。