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閉校した学校の中にあるカフェ PERCH CAFE オーナー

Maki Shimizu

PERCH CAFEオーナー/NPO法人原田芸術文化交流館管理人

尾道市原田町生まれ。県立広島女子大学(現・県立広島大学)卒業後、市内の病院に就職。2008年、原田町にUターン。2015年、地元の有志たちと閉校した中学校を再生し、「原田芸術文化交流館やまそら」をオープン。地元産の食材や自家焙煎コーヒー豆を使った「PERCH CAFE」を営むかたわら、施設のチラシやポスターデザインも手掛けている。3児の母。

里山の町に誕生した
地域の交流館

広い空、山々の稜線、自然色豊かな田畑、ゆったりとした間隔で並ぶ民家。尾道市街地から車で走ること約25分、ここは、尾道市原田町。「尾道」といえば海や島を思い浮かべる人が多いかもしれないが、原田町には懐かしい里山の風景がある。

山あいを少し登ると、2014年に閉校した旧尾道市立原田中学校が見えてくる。学校としてはいったん幕を降ろしたものの、2015年には地元有志により再生され、「原田芸術文化交流館やまそら」がオープン。レンタルルームやカフェ、ギャラリー、キッズルームなどを新設し、地域のコミュニティスペースとして生まれ変わった。

普段は音楽スタジオでの楽器練習や、趣味の教室利用が多い。ほかにもマルシェや野菜市などのイベントも開催し、地元住民だけでなく近隣都市からも多くの人が訪れる。

ほしかったのは
町の人が羽休めできる寄る辺

「PERCH CAFE」は、「やまそら」とともに2015年にオープン。保健室だった場所をリノベーションした店内には、かつて教室だった頃のおもかげが残る。

カウンターの中でコーヒーを淹れてくれるのは、カフェオーナーの清水さんだ。メニューには、原田町にある農園の自家焙煎コーヒー豆やジャムを使ったドリンクが並び、地元産の野菜や果物を使った食事を提供する日も設けている。

清水さんにとって原田町は生まれ育ったふるさとで、ここ旧原田中学校は母校だ。Uターン後、3児の母として主婦業に専念していた矢先、ひょんなことから「やまそら」の立ち上げに関わることに。「ゆっくりとコーヒーの飲める場所がほしい」と立候補し、“とまり木”を意味するPERCH(パーチ)という言葉を店名に据えた。

大切なのは、
この活動を続けていくこと。
つないでいくこと

試行錯誤しながらカフェを営むうちに、地元の農家から果物や野菜を使わせてもらえるようになり、地産地消のゆるやかなサイクルが生まれていった。もともと“何かを作ること”が好きだった清水さん。子育て中に培った料理の腕を発揮し、週末にはこだわりの手作りカフェランチやデザートを提供する。

肩の力が入りすぎて、体調を崩してしまった時期もあった。しかしそれを機に、「物事をシンプルに捉えられるようになった」という。がんばり過ぎてエネルギー切れを起こすより、継続することが何よりも大事――その想いを胸に、自身に負担のかからない塩梅で、今日もカフェの看板を出す。

子どもたちの
記憶に残る場所にしたい

農業や産業の新たな担い手を求め、2022年にはNPO法人として、空き家バンクの運営も開始した。町の課題は高齢化による人手不足だけではないと、清水さんは考える。

原田町の子どもたちはスクールバスで隣町の学校に通っているため、自分の町にいる時間が少ないのが現状だ。「子どもたちに、もっとこの町で過ごしてほしい。将来『あんな場所があったな。自分もあそこで何かやりたいな』とこの交流館を思い出してもらえれば」。

カフェオーナーとして、交流館の管理人として。市内外から老若男女が訪れる、静かな里山のこの場所で、清水さんは今日も地域の活力を支え、見守っている。

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