尾道で育んだ
まちづくりへの想い
髙垣さんは尾道で生まれ育った。尾道について聞くと、「コンパクトだけど力強い町」であり「ポテンシャルのある町」だと思っている一方で、「この町の持つ潜在能力はこんなものではない。キラリと光る宝石はまだまだあるはず」と感じている。
まちづくりに対する想いの強さは「祖父ゆずり」なのだと笑う。髙垣さんの祖父、髙垣繁太郎氏は1925年に尾道で創業。経営のかたわらで尾道の発展に貢献する活動に積極的だった。そんな祖父の姿は、髙垣さんの想いを形成する「原風景」となっている。
古さと新しさがバランスよく
混じり合う商店街
どこか懐かしい、昔ながらの趣と新しさがバランスよく共存する尾道本通り商店街。JR尾道駅からのアクセスに恵まれ、全長約1.2kmというほどよい長さが観光にも普段使いにもちょうどいい。さかのぼること江戸時代。尾道は貿易港として人の出入りで栄え、特に商店街のあるエリアは町の中心部として発展してきた。
そんな歴史ある商店街の一角にあるのがセレクトショップ「PARIGOT(パリゴ)」を手掛ける、株式会社アクセだ。髙垣さんの祖父が創業して以来さまざまなストーリーを経て店舗は拡大し、まもなく創業100年を迎える。髙垣さんは、アクセの代表取締役社長を務めている。
地元愛があるからこそ
厳しい目も持つ
新しい店が生まれるそばで、のれんを下ろす店もある。人口や観光客減少の影響から活性化への課題は多い。商店街連合会の会長を務める髙垣さんは、観光客や地元客がアクセスしやすいような仕組み作りを目指している。ほかにも尾道のまちづくりを支える議会のポストをいくつか兼任し、意見交換の場ではときに厳しい意見を伝える場面も少なくない。
一方、休日は仕事モードを完全にオフ。「仕事は一切しない」と決めて、趣味のサーフィンやお酒を楽しむなどメリハリを大切にしている。自宅は海に面した立地にある。夕焼けの映える穏やかな海。島と島をつなぐ尾道大橋。渡船が行き来する風景。「こんなに良い地域はほかにない」――尾道の魅力を再確認し、休日が終わるとまた町の活性化への道筋を探して奔走する。
小さな宝石の一つひとつが
尾道を形作っていく
小さくてもキラリと光る、宝石のようなまちづくり。「人からの受け売りだけど」と笑うが、髙垣さんが目指すまちづくりがよくわかる。
尾道は、古くから人の出入りが多い町だった。それはきっと、今も変わらない。人口減少の課題はあるが関係人口は増え続け、内と外で日々新しい関係性が作られる。人と人とがつながれば、新しい価値も生まれていく。それら一つひとつの価値は、小さくても輝き出すだろう。尾道は、まだまだ多くの原石を秘めている。